何で同じUSBの口なのに充電できねぇんだよ - USB Power Delivery 仕様編

注記:筆者もちりばつなUSB専門家ではないので、嘘・大げさ・まぎらわしい内容があったらご教示下さい。


さて前回のマイクロUSBでの充電の仕組みの次はUSB-Cでの充電。
USB BCのおかげでスマホ(大笑)ぐらいまでは0.5C充電が可能になった。
すると世の中の皆がいよいよUSBケーブルを充電ケーブルとしか考えなくなり、「なんでタブレットやノートPCは充電できないの?」。
再三申し上げるが、USBは充電器ではない。
しかし一本のケーブルで、しかもマイクロUSBのような向きを間違えてイライラ、なんてことなく、データも電源も供給できればもうなんでもUSBの口さえあればよい、となる。
これは便利だ。


そこでUSB Power Delivery (PD)では最大100Wまで充電が対応できることになった。
具体的には5V/9V/(12V)/15Vまでは最大3A、20Vなら最大5Aまで充電可能となったのだ。
USB-CにはCCと呼ばれる端子があり、これを使ってUSB機器と充電器が何V何Aで充電するか交渉をして、充電をするのだ。
USB BCとの後方互換性も保たれているので、USB-C - マイクロUSB変換ケーブルを使えば5V1.5Aの充電もできる。
詳細はUSB Power Delivery Specification Revision 2.0 Version 1.3およびUSB Power Delivery Specification Revision 3.0 Version 2.0を参照していただきたい。
これで晴れて(3000mAhrのバッテリーの)1C充電対応になったのだ。
あの逸般人の方々からすれば、急速でもなんでもないのだが、これが世に言われる「急速充電」の正体だ。


まぁ、絵にかいた餅は素晴らしい。
何が素晴らしくないかというと、消費者はそれほど頭がよくないのだ。
大変よくある質問が「USB-Cのケーブルでつないでいるのに充電されないの、どうして?」。

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回答例(1)
「ああ、これはマイクロUSB用の充電器だよ。頭がUSB-Aの差込口でしょ?これにUSB-A - USB-C変換ケーブルを挿しても5V/1.5Aまでしか給電できないから、タブレットもノートPCも充電できないし、スマホもゆっくりとしか充電されないよ。」回答例(2)
「ああ、これはUSB PD対応の充電器だけど、容量が全然小さいよ。スマホ(大笑)用でしょう?5V/3Aしか出ないから、タブレットもノートPCも充電できないよ。」回答例(3)
「ああ、これはUSB PD対応の充電器だけど、容量が全然小さいよ。2セルの9V/3A対応だね。27Wまでしか充電出ないから、ノートPCは充電できないよ。」
などなどなどorz...orz...orz...
そう、充電器ではUSB PDのどの仕様で充電可能か、能力が決まっている。
大きい電力を供給するのには、大きなコイルと大きなトランジスタを使った高電圧・大電流対応のAC/DCコンバータが必要だ。
同じUSB-Cの口でもノーパソ用の充電器とスマホ(大爆笑)の充電器ではまるで大きさが違うのは、このためだ。
大は小を(大凡の場合)兼ねるので、ノーパソ用の充電器ならスマホ(爆爆)を充電出来ることがほとんどだ。
しかし、逆はほぼ無理です、あきらめてください、お願いします。


ということで、筆者は65W対応のUSB PD充電器をあちこちに準備してある。
これならUSB-Cハブ経由で充電してもまず問題なく20V/3Aが必要なノートPCを充電できるからだ。
USB-Cハブ自身も電気を食うことを忘れずに、マージンのある電源を選ぶことが肝要。


ああ、ときどきこういう地雷もあるので気を付けて。
口が同じだからと言ってUSB PDとは限らない。
こんなのをスマホにつっこんだら、正に大爆発。