TVはまだまだブラウン管がよい

今日は、仕事で横浜の展示会へ。
今回の引越しで、TVを液晶のものに買い換えたが、正直まだまだブラウン管の方がよい。
一応その業界で飯を食っているので、いまさら「応答速度が」とか「色再現性が」とかいうつもりはない。
問題は、ソースである。



オーディオのソースは、デジタル化が進んで久しい。
今や、アナログのソースはアナログ地上波TV、FMやAMラジオ、そしてライブ位のものか。
尤も、その製作はオールデジタル化が進んでいるので、ものによってはいわゆるエレキギターでさえ一度デジタル化されてしまっているかもしれん。
ただオーディオでは、再生器が決定的なほどアナログデバイスである。
通常はデジタルソースの場合でも、I2SでD/Aに流して、いわゆる波形データに変調した後に、大変アナログな、電気信号を空気の振動に置き換えるデバイスに、その信号が流れる。
当然のことながら、このデバイスは1か0という状態しかとらないわけではないし、反応速度というものが存在することによって、一種LPFを適用したような滑らかな反応をする。
もちろん、オーディオの世界でも完全デジタル再生器が存在しないわけではないが、まだほとんどの民生用の再生器が、このD/Aのプロセスに拠っている。


しかして、TVである。
液晶やプラズマといった表示器も、最終的には与えられたデジタル信号を、光量というアナログ量に変調している。
これはブラウン管と変わらず、オーディオとも変わらない。
問題はその空間的・時間的な広がりである。
ブラウン管というデバイスには、液晶やプラズマほど厳密な画素単位が存在せず、また電子ビームを走査して全画面を描画するという性質から、「なんとなくこの辺にこのくらいの光量」で書かれていた。
一方、液晶やプラズマの場合には、画素というグリッドがきっちりと切られている。
また、各画素へのアクセスも信号線、走査線を用いて、あたかもDRAMのセルにアクセスするようである。
また、ブラウン管の各画素の発光時間は1msecぐらいであるのに対して、液晶やプラズマでは1リフレッシュフレーム間(16.7msec)同じ画像が表示され続ける。
これによって、周囲との差が目に付き、比較しやすくなる。
ソースによっては、デバイスの画素対ソースが1対1対応している、非常にくっきりとした像が再生される。


さて、そのような液晶、プラズマといたディスプレイデバイスを適用した表示器に、現状のソースを表示するとどうなるであろうか?
DVDはEDTV720x480の解像度、地上波デジタルはサイマルがまだまだ多く、EDTV640x480の解像度のがかなり多い。
しかもMPEG2圧縮で、ビットレートは実効4Mbits/sec程度である。
真っ白とか真っ黒でもない限り、圧縮による高周波成分の劣化は免れない。
運がよければ1280x720のHD720のソースを「見ることができる」かもしれない。
これでも12Mbits/sec、画像は解像度が高くなるほど圧縮しやすくなるので、解像度対ビットレート比がより高いHD720放送の方が、救いがあるだろう。
BDでも導入しない限り、1920x1080のHD1080のソースはないのである。
いずれにせよ圧縮画像のソースには、モスキートノイズブロッキングノイズなどが、ばんばん入っている。
さらにソースの解像度とディスプレイデバイスの解像度が合っていないと、内部のスケーラーが画素単位のブロッキングアーティファクト(人工的な意図しない像)を作り出す。
不幸なことに、このシステムはHPFとして働いてしまう。
当然ながら、圧縮画像のノイズもくっきり強調!
BDのHD1080のソースでもない限り、いわゆる"FullHD"を謳った液晶やプラズマディスプレイバイスは、宝の持ち腐れどころか、画質を落とすものになる。


ブラウン管は・・・オーディオにおけるスピーカーと同じで、適度にソースを鈍らせて表示する特性上、こういった問題が液晶やプラズマといったディスプレイデバイスに比べると、顕在化しにくい。
筆者の実家には、早もの買いの銭失いといってもよい、地上波デジタル対応のブラウン管TVがあるが、なかなかどうしてきれいな画質である。
ゆえにソースが全てHD1080化されるまでは、ブラウン管TVの方がよい。
しかし、今の放送業界に全インフラをHD1080化できるような体力があるかどうか・・・