スマートウォッチ(Ticwatch E)を購入 - 1年ぶり4回目

f:id:nobu_macsuzuki:20180216170058j:plain
わずか2か月でHuawei Watchと別れて、一年が経った。
Huawei Watchに関しては短い付き合いになると覚悟の上であったが、最初のmoto360も、Apple Watchも「コレジャナイ感」は半端なく、どうにも「スマートウォッチ」とは思えなかったのだ。
よっぽどスマート(笑)さのかけらのないGarmin Forerunner 225の方が、筆者には実用的スマートウォッチだ。
昨年の年末商戦前に出たIDCの予想以降も、IT業界ではスマートウォッチのオワコンぶりが変わりなく、いわゆるIT・ガジェット系のニュースで見ることは稀になってきた。
しかしマーケティング的には、ここにきて面白くなってきている。
フォッシルや、タグホイヤーモンブランなどの腕時計デザインブランドがコンスタントに新製品を出してきているのだ。
カシオも昨年Protekのラインにスマートウォッチを追加した。
しかも、タグホイヤーモンブランなどの「高級」ブランドやカシオのものを除くと、市場価格がほぼ$200前後で横並びだ、安くはない。


腕時計市場とはどんな市場なのだろうか。
この業界の方は大変親切で、こんな貴重な資料をネットでロハで公開してくれている。
http://www.jcwa.or.jp/images/estimate_graph.png

  • 全世界の腕時計の生産台数は年間14億台で、年間成長率がほぼ0
  • そのうち95%以上がクォーツ、つまりホームセンターなどでキュッパやイチキュッパで売っているあれ

こんな市場で在庫が山のように膨れ上がることは考えられないので、生産台数=出荷台数だろう、FIFOだ。
スマートウォッチの出荷台数が年間おおよそ2000万台、全世界腕時計の1%強となる。
よくいう「アーリーアダプター」というのは市場の+σテール、つまり16%。
つまりスマートウォッチを腕時計市場全体でみると、アーリーアダプターさえつかみ損ね、見事にChasmの谷に落ちたことになるのだ。
ちなみにスマホ(笑)の年間生産台数は20億台に届くほどで、台数規模としては腕時計に並ぶ。
IT業界からすれば、2匹目の>10億台市場への挑戦は見事に失敗に終わったわけだ。


ところが、これを腕時計市場のプレーヤーから見たらどうだろうか?
こちらこちらに腕時計市場の変遷を書かれている方がいるのだが、他の市場と同様に技術の水準化によるコモディティー化が一気に進んだ後に、「良質で安く手に入る大量生産品」と「差別化のすすんだ寡少な高級品」との市場のセグメント化が進んだのだ。
他の市場って何?という方は、車を見よう、PCを見よう。
どちらも年間出荷台数がおおよそ1億台の市場だが、見事なセグメント化が進んでいる。
腕時計のセグメントの規模に関する情報がないのだが、一般的なセオリー通りであれば+σテール、つまり16%がこの「差別化による高級品」の市場規模だろう。
だとすれば、スマートウォッチの1%強の腕時計市場への上積みは、差別化腕時計を作っている腕時計デザインブランドからすれば10%近い市場拡大に見えるはずだ。
新しいセグメント、売り上げ台数10%上積み、そりゃ、やるだろう、やるしかないだろう。
スマートウォッチのラインナップ化をやるだろう。
返ってこの市場の顧客からみたらどうだろうか?
このご時世に腕時計を買ってつける御仁は、価格はどうであれ与太郎だ。
スマートかそうでないかはともかく、気に入れば買うだろう。
自分の好きな腕時計デザインブランドが新作を出したら、たとえ10本目だろうが20本目だろうが買うだろう、与太郎だ。
そしてスマートかそうでないかは、気にとめないだろう。


ここが筆者も大きくつまづいていたところだ。
「スマートウォッチ」という言葉にとらわれすぎていて、何か特別な腕時計にできない「機能」を求めていたのだ。
そんなものは「垂直差別化」の終わった腕時計市場では、日本の時計メーカーがしのぎを削る「ソーラー腕時計」「電波腕時計」「GPS腕時計」と変わらないのだ。
なにもなくたって、ブランドインテマシーとフェイスリフトで物は売れるのだ。
ただ、その市場規模はIT業界のお気に召すものではなかっただけなのだ。


ちなみに筆者は高機能腕時計マンセーで、キナティックもソーラー式三波電波腕時計も所有している、別な意味で与太郎だ。
GPS腕時計ももう少し値ごろになったらぜひ購入したいと考えている。
全てクロノグラフ付だ。
こんな筆者ならスマートでないスマートウォッチを一本ぐらい持っていてもよいだろう。
ということで、4度目のお迎えをすることにした。

キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論

キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論