"自己責任"、"「転んでも一人で起きる」"の意味がわからない方は、以下の記載の事柄は適用しないように、お願いいたします。前回に引き続き、ロームのBD8306MUVを使ったバッテリー入力で動く3.3V電源の基板設計。
いよいよ、プリント基板(PCB)の作図だ。
PCBの作図に当たってまず決めなくてはならないのは、どんな技術でPCBを作るかだ。
片面・両面基板、多層貫通基板、ビルドアップ基板などなど。
当然ながら高度な多層基板、つまり後の基板ほどお高くなる。
今回はCADのオペトレを兼ねているので、4層貫通基板を使うことにした。
- Top: 配線1
- L1: GND
- L2: VBATと3.3V
- Bottom: 配線2
なんとお大尽、なんと贅沢。
流れとしては、
- PCBを作成
- 大型部品を配置
- 残りの部品を配置
- 電源、GNDのビアを打つ
- ビアと表層(TOP)の電源、GNDを結線
- GND(L1)、電源(L2)を作成
- 残りの部品の結線
通常の結線では、BGAやQFNのビアとそのあとの各層のファンアウトなど、一番設計的にキツいところをまず引いてみて、それから本格的な作図に入るが、まぁ今回は練習、お大尽で配線はあまりまくりになるのは見え見えなので、これで大丈夫だろう。
PCBを作成
前回作成した回路図を開き、"プロジェクト" -> "PCB転送"を選択。
新規のPCBシートがプロジェクトに追加されて、回路図上の全部品が転送される。
部品にフットプリントが登録されていない、シンボルとフットプリントのピン定義に矛盾があるなどすると、転送できずに警告がでる。
ちまちま直す。
次に"作図" -> "矩形"を選んで、適当に長方形を書く。
書いた図形を選択して、プロパティで、以下を修正する。
- 層: Other
- 層種類: Board (これで書いた四角形がプリント基板になる)
- 幅: 30.00 (mm)
- 高さ: 30,00 (mm)
- 座標X: 0.00 (mm)
- 座標Y: 0.00 (mm)
これで、30mm□のプリント基板のもと板ができた。
最後にブチまかれている、部品を基板のそばに持ってくる。
"編集" -> "フットプリントの整列"を選択する。
"基板外形の右"に並べるオプションを選択して、"OK"を押す。
きれいに勢ぞろいだ。
大型部品を配置
次に大型部品を配置する。
どう並べなくてはいけない、というルールはないのだが、今回は電源を意識しながら切りのよい寸法(0.5mmとか25milとか)のところに配置していくのがよいだろう。
マウスの操作方法は、回路図作成時と同じだ。
- 左クリック: 選択や配置、配線
- スクロール: 拡大縮小
- 右クリック: クリックしたままマウス移動で、画面のスクロール(上下左右)
部品を選択して真ん中付近にマウスカーソルを持っていくとポインタが十字矢印になるので、そこで左クリックでつかんで移動しだすと移動。
その状態でスクロールや拡大縮小は可能なので、好きなところにもっていって、再度左クリックで配置。
修正は"プロパティ"の"座標"でできるので、だいたいの位置までマウスでもっていって、後はプロパティで修正、の繰り返しだ。
これで電源IC、ヘッダとバックブースト用のコイルが配置できた。
残りの部品を配置
大型部品の配置が終わったら、ほかの部品もどんどん配置。
ここで白く飛び交っているのが、ラッツネストと呼ばれる仮配線で、回路図の結線がそのまま反映されている。
各ピン間を最短距離で結んでいるだけだ。
これを目安に、電源、GNDを除いた配線ができるだけ交差しないように部品の向きを変えながら(配置移動中に"R"で部品が回転する)、部品を配置していく。
部品の配置に邪魔なので、シルクはガンガン移動してしまう。
なお、今回はほとんどが表面実装部品(SMT)で、すべて表層に配置している。
別に裏面に配置しても構わないが割高になるので、機構的に基板サイズに余裕があるのなら表層のみに配置の方がよいだろう。
基板層数の設定
電源、GNDを接続する前に、基板の層数を設定する。
"各種設定" -> "設定"を選択して、"層"を左のメニューから選ぶ。
右のタブで"物理層"を選ぶと、すでにTopとBottomが設定されているはずだ。
つまりデフォルトは両面基板なのだ。
これに2層追加する。
下の"追加"ボタンを押すと、"Top"の下に一層追加されるので、"L1"と名前を付ける。
同様にもう一層追加して、"L2"として、"OKで抜ける。
電源・GNDのビアを打って、結線
さて、がんがんビアを打とう。
"作図" -> "ビア"を選択、もしくは上のアイコンから"ビア"を選択すると、デフォルトのドリル径0.3mm、ドリルランド径0.6mmのランドが選択できるので、"OK"を押す。
後はガンガン、ガンガン。
次いで、ビアと各ピンを結線。
これも回路図と同じ要領で、上のメニューで"配線"を選び、始点になるランドをクリックすると配線開始、終点になるランド、もしくは配線をクリックすると配線終了。
勝手にティアドロップ処理や、直角配線の禁則はかかるので、どんどんすらすらすいすいすい。
これは電源・GNDの配線なので、配線の太さを0.2mmにしてある。
配線を選択して、"プロパテ"ィの"線幅"で変えることができる。
ベタ電極で電源、GNDを作成
いよいよ電源、GNDを形成する。
"PCB作成" -> "矩形ベタ"を選択する。
画面一番下のペインで作業層が選択できるので、"L1"を選択する。
基板の端0.5mmのところまで広がった矩形を作成する、始点と終点をそれぞれクリックするだけだ。
するとどのネットを接合するか確認するダイアログが開くので、"GND"を選択する。
これが出来上がったL1だ。
GNDと接続されるビアはGNDと一体になっている一方、電源のビアは隙間が空いてGNDとは接続されていないのが分かる。
ヘッダーのビアはベタ接続でなく、十字接続(サーマルパッド)になっている。
同様にL2でVBATと3.3Vのベタ電源をそれぞれ、右半分、左半分に作成する。